研究概要 |
1.線条体,側坐核の分離培養:新生仔ラット脳バイブラトーム切片とり線条体,側坐核を別々に切り出し,その分離培養を試みた。その結果,それぞれの分離培養において多くのGABA陽性神経が得られることが確認され,その形態は、線条体と側坐核のもので異なる特徴を示し、黒質分離培養におけるGABA陽性神経細胞とも細胞体の大きさ,突起の伸長形態が異なることが明らかになった。 2.標的特異性の解析:線条体と黒質神経細胞の混合培養に先立って,それぞれの分離神経と同一または異なる神経組織由来のグリア細胞が分離神経細胞の成育におよぼす影響を調べた。その結果,黒質分離神経細胞は黒質由来または標的神経組織(線条体)由来のグリア細胞によって良好な成育を示すが,非標的神経組織(脊髄)由来のグリア細胞では成育が阻害された。また,線条体分離神経細胞についても同様な結果が得られ,神経細胞とグリア細胞との間にも標的組織による親和性が示唆された。 3.分離培養におけるGABA作動性神経とドーパミン(DA)作動性神経のシナプス形成:先に我々が開発した黒質分離培養は,培養ニューロンの大部分がDAニューロン(約40%)とGABAニューロン(約40%)で構成されている。DA合成酵素であるチロシン水酸化酵素(TH)またはGABAに対する免疫組織化学を用いた電子顕微鏡観察により,両者は相互にシナプス形成を行うことが示唆された。黒質-線条体などの混合培養系におけるシナプス形成率の定量的解析は今後の課題として残されている。 4.線条体における一酸化窒素(NO)合成ニューロンとDA終末の関係:近年,神経伝達物質としてのNOの作用が注目されている。線条体においてはNMDAリセプターを介したNO産生によるDAの放出が薬理学的に示唆さており,この形態学的根拠を明らかにするために,NADPH-diaphorase(NO産生ニューロンマーカー)組織化学とTH-免疫組織化学を組み合わせた電子顕微鏡観察を行った。その結果,NOニューロンに対するシナプス入力は少ないが、DA終末の多くがグルタミン酸作動性と考えられる終末(線条体投射ニューロンスパインと非対称性シナプスを形成)とともに、NOニューロンに直接接触しており,その部位が興奮性アミノ酸によるNO産生,DA放出機構を裏付ける構造であることが示唆された。
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