研究概要 |
1.ブタ膵臓ホスホリパーゼA_2によるsn-2位にEPA,DHAを含むホスファチジルコリンの合成、LipozymeIM60によるsn-1位にEPAを含むホスファチジルコリンの合成、Streptomyces sp.由来のホスホリパーゼDによるこれらのホスファチジルコリンのホスファチジル基転移を行うことができきた。これによりホスファチジルコリンと同一の脂肪酸残基をもつ高度不飽和脂肪酸含有ホスファチジルエタノールアミンとホスファチジルセリンの合成物を得ることができた。 2.コリン結合リン脂質に比べアミノ基結合リン脂質のほうが赤血球により導入されやすいことを明らかにできた。 3.TNBSクエンチング法により、赤血球にとり込まれたリン脂質の40〜50%は膜タンパク質近傍に存在することを示すことができた。 4.高度不飽和脂肪酸含有ホスファチジルエタノールアミンはほとんど溶血性を示さないことがわかった。 5.水素添加したリン脂質は赤血球膜の流動性を明らかに低下させることを確認できた。 6.大豆リン脂質は赤血球膜の流動性を改善できないことがわかった。 7.合成したEPA,DHA含有リン脂質はいずれも赤血球膜流動性を改善する作用のあることが確認された。 8.コリン結合リン脂質、アミノ基結合リン脂質はいずれもEPA,DHAをsn-2位に含む混合形態の場合に最も高い赤血球膜流動性改善効果を示すことがわかった。 9.同一の脂肪酸残基の場合、コリン結合リン脂質はアミノ基結合リン脂質よりも赤血球膜の流動性改善効果が低いことをみとめた。 以上の結果より判断し、高度不飽和脂肪酸含有リン脂質は赤血球膜の流動性を高めて赤血球の変形能を向上させ、ひいては高血圧症や血栓症の予防や治療に役立つことも期待できることが明かとなった。
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