研究概要 |
本研究は、猫パルボウイルス亜群に属する猫汎白血球減少症ウイルス(FPLV)、ミンク腸炎ウイルス(MEV)、犬パルボウイルス(CPV)の分子遺伝学的な解析を行い、これら3ウイルスの相互関係、ならびにCPV出現機構の解明を目的とした。 ウイルスのVPgeneに存在する宿主域決定領域(60-91map units, Horiuchi et al.,J.Gen.Virol.,in press)をPCR法により増幅し、直接塩基配列決定法(Higuchi and Ochman,Nucleic Acide Res.,1989)により塩基配列を決定した。 現在までに、FPLV2株(日本;1974,フランス;分離年不明)、CPV4株(日本;1979,1982,1984,1991)、MEV1株(日本,1980)の計7株の塩基配列を決定した。このうち代表的なもの(FPLV1株,CPV3株,MEV1株)についてはDNA Data Base of Japan(DDBJ)に登録した。株数が少なかったため分子系統樹を書くには至らなかったが、塩基配列より予想されるアミノ酸配列の多重アライメントの結果、宿主域決定領域内に系統発生的にCPV特異的と考えられる5個のアミノ酸を同定した[amino acid(aa)93,aa103,aa305,aa564,aa568]。また、Parrishらが米国で報告したaa300,aa305の置換を伴うCPVの変異(Parrish et al.J.Virol.,1991)が日本のCPV分離株でも認められた。猫パルボウイルス亜群の分子進化の全体像を知るためにはより多くのウイルス株の塩基配列を調べる必要があるが、本研究の結果から、系統発生的にCPV特異的なアミノ酸の存在が明かになった。以上の結果はJ.Gen.Virol.(Horiuchi et al., in press)に発表した。また、CPV特異的な5アミノ酸をもつ組み換えMEVを作製し、その生物性状をCPVと比較したが、組み換えMEVはCPVの生物性状を示さず、CPVの出現機構に関してはさらなる研究が必要である。
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