研究概要 |
1.感染蚕ヘモリンフ中の不溶性画分を遠心洗浄することによって、組換え蛋白を部分精製、濃縮を行った。この不溶性画分は、弱アルカリ性(pH8.0)、還元条件下で、4M Guanidin Hydrochrolide, 6M Urea,あるいは1%SDS等によって可溶化された。ここから可溶化のための物質を取り除くと再び不溶性の沈殿となった。尿素存在下の陰イオン交換クロマトグラフィーを行なったところ、0.15-0.2MのNaClで核蛋白は溶出され、この画分は50mM Tris-HCl pH8.0、または水に透析後も再沈殿することはなかった。しかしながらこの時、リン酸を含む緩衝液に透析すると沈殿を生じることが分かったので、以下Tris系の緩衝液を用いることとした。この可溶化核蛋白を含む画分は室温で取り扱うと断片化が生じ、これはセリンプロテアーゼ阻害剤であるPMSFを加えて4℃で取り扱うことによって妨げることが明かとなった。 2.可溶化され、濃縮された組換え核蛋白は単クローン抗体を結合させたアフィニティーカラムを用いてさらに精製することが可能であった。この抗原をHigh-density Particleに結合させ凝集抗原の作製を試みた。しかしながら抗原を感作させるだけでParticleは凝集した。塩析では10%飽和硫安で沈殿し、しばしば不溶化した。これらの結果は、アミノ酸配列からも予想されていたとおり、この蛋白の疎水性が高いことと関連していると考えられる。良好な状態でparticleに感作させるためには何らかの工夫が必用と思われる。 3.SDS存在下のゲル濾過は精製にとって有効な手段であることが明かとなった。SDSはイオン交換、抗体のカラム等に影響を与え、ELISAプレートへの抗原の吸着を阻害する。そのために診断用抗原の精製の最終段階にこのステップを導入し、電気泳動法等でできるかぎりSDSを除くことが必用であると考えられる。
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