研究概要 |
93年度の研究により、生後6日目に著しい高中性脂肪血症を呈したアポ蛋白C-II(apoC-II)欠損症の遺伝子変異を明らかにした。 ApoC-II遺伝子の4つのエクソンとエクソン-イントロン接合部の全塩基配列を決定したところ、患者の第2イントロンのdonor splice siteに-塩基置換(G→C)を同定した。この変異は正常で存在する制限酵素Hphlの認識配列を失わせるため、この領域を含むPCR産物をHphlで消化すると、restricition fragment length polymorphism(RFLP)が生じる。これを利用して患者家系を分析した結果、患者はこの変異のホモ接合体で、父母はヘテロ接合体、弟は正常であった。さらに同じ第19染色体上にクラスターを形成するapo Eの多型性との関係を見ると、apo Eisoformは両親がE3/4、患者がE4/4、弟がE3/3であった。 現在までにapoC-II欠損症の遺伝子変異は世界で10例前後の報告があるが、第2イントロンのdonor splices siteの一塩基置換(G→C)は1988年にFojoS.SらによりC-II_<Hambunga>として一家系が報告されているものと同一の変異で、本家系が世界で二例目である。本家系では、apoC-IIの一塩基置換はapo Eの多型性(E4)と共に両親から遺伝しており、C-II_<Hamburg>の家系でE3,E2と共に遺伝していることから、C-II_<Hamburg>とは独立に起こった変異と考えられた。 この一塩基置換により正常なmRNAのスプライシングが障害され、apoC-II蛋白が欠損するという疾患の分子生物学的メカニズムを同定した。 以上の成果は、一部を1993年度日本動脈硬化学会冬季大会で発表し、現在投稿準備中である。
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