研究概要 |
大阪府立大学の実験圃場に造成した芝生地(コウライシバ)と裸地において,1994年10〜12月および1995年7月〜10月に熱収支(顕熱,潜熱フラックス),窒素酸化物(NOとNO_2),CO_2および水蒸気のフラックスを傾度法を用いて同時測定し,それらの季節変化を調べるとともに,植物の有無がフラックスに与える影響を調べた。その結果,顕熱フラックスは芝生地<裸地,潜熱フラックスは逆に芝生地>裸地となり,芝生(植生)が温度上昇を抑える効果のあることが確認された。一方,NOフラックスは芝生地,裸地ともに多くの場合上向きであり,土壌から大気中に放出されていること,および裸地における放出量が芝生地よりも多いことが確認された。また,季節変化がみられ,10月にはフラックスの絶対値が減少したが,これは地温の低下にともなう微生物活性の低下が原因だと考えられる。NO_2フラックスは,芝生地ではほぼ下向きであったが,裸地では向きが一定ではなく,上向きの場合もあった。芝生地でのNO_2フラックスは,NO_2濃度との間に負の相関が認められ,濃度が高いほど芝生による収着(吸収+吸着)が多いことが確認された。NO_2の沈着速度は,芝生地では裸地に比べてかなり大きかったが,7〜8月に比べて10月には低下した。芝生地におけるこの季節変化は,風速や気孔開度の変化によるものと考えられた。なお,NO_X(NO+NO_2)フラックスとして考えた場合には,芝生地では下向き,裸地では上向きとなった。また,CO_2フラックスは,芝生地では,日中は下向き(光合成による吸収),夜間は上向き(呼吸による放出)といった明瞭な日変化があったが,裸地では常に上向きであった。このように,植物があることにより,土壌からのNOの放出が抑制され,NO_2の収着が促進されることが明らかとなった。このことは,植物が大気浄化に寄与していることを表している。
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