この1年間の研究により、すべての粒子が実空間(r空間)で二粒子束縛状態を作っている、という描像から出発した超伝導理論の定式化をほぼ終えることができ、論文にまとめる段階まで来ている。この定式化の特徴は、以下の3点にある。 1.BCS理論の結論をある極限において再現する。 2.多体相関の効果を、normal stateと同様の摂動展開により系統的に取り組むことができる。 3.絶対零度での超流動^3He-Aの軌道角運動量が、(N/2)hであると予言する。 3については、既成の理論、すなわちゴルコフ方程式との違いがどこにあるのかも明らかにすることができた。 以上のように、当初の研究目標の重要な部分について、成果を上げることができたと思っている。 これからの課題は、この定式化がどこまで既成の理論と同じ結果を与え、どのような場合に異なる結果を与えるのかを明らかにし、また、その違いを明白にする実験を見い出すことである。 BCS理論が発表されてすでに40年近く経つが、超流動・超伝導理論の一層の発展のためには、理論の再検討・より確固とした基礎づけが必要である。いましばらくの時間を、この目的に費やしたいと思っている。
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