研究概要 |
有機材料DAN(4-(N,N-dimethylamino)-3-acetamidonitrobenzene)に注目し、除冷法・溶媒蒸発法により、バルク結晶の成長を行った。しかしながら、現在までのところ、この結晶は結晶性が悪く、ラマンスペクトル測定には成功しておらず、この方法によるDANの非線形屈折率の応答時間の評価は行えていない。 一方、DANを用いた有機単結晶コアファイバーをゾーンメルト法を用いて作製した。この有機結晶ファイバーを用いて、フェムト秒パルスレーザーパルスの非線形伝搬実験を行い、スペクトルが長波長側へシフトすることを見出した。この効果は、非線形屈折率の応答が瞬時ではなく、応答時間が有限であることに起因する。この結果を、非線形屈折率の応答時間効果を取り入れた非線形伝搬方程式を用いて解析し、有機材料DANの非線形屈折率の応答時間は約30fsであることを初めて見積もった。 さらに、このような非線形屈折率の応答時間効果のパルス圧縮効率への影響についての理論解析を行った。その結果、このような非線形屈折率の応答時間効果が存在しても、3次までの位相補償を行えば、効率を劣化させることなくパルス圧縮を行えること(たとえばDANファイバーにより100W,100fsの光パルスが約10fsに圧縮できること)を初めて明らかにした。
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