研究概要 |
1.赤血球の変形能をシリコン単結晶基板マイクロチャンネルを用いて測定することにより、再現性の高い測定結果が得られた。 2.リパーゼやホスホリパーゼを用いて合成したEPA,DHA含有ホスファチジルコリン(PC)は、赤血球にとり込まれることによりその変形能を向上させることを証明した。 3.エタノールアミン結合リン脂質ではsn-2位にDHAを含むものが、セリン結合リン脂質ではsn-1位にEPAを含むものが赤血球の変態能を大きく向上させることも証明できた。 4.リン脂質クラス間を比較すると、エタノールアミン結合リン脂質はコリン結合リン脂質およびセリン結合リン脂質よりも、赤血球変形能を向上させる作用が強いことを認めた。特に、sn-2位にDHAを含むエタノールアミン結合リン脂質が赤血球の変形能を最も向上できることが示唆された。 5.蛍光偏光解消法により赤血球膜の流動性を測定したところ、膜の流動性向上は赤血球の変形能の向上とよく対応していた。 6.鮭卵より調製したEPA,DHA含有リン脂質においても赤血球変形能の向上作用がみられた。 7.リノール酸を主な脂肪酸とする大豆リン脂質は赤血球の変形能を改善しなかった。また、水素添加したリン脂質は赤血球の変形能を明かに低下させた。 以上の結果により、EPA,DHA含有リン脂質が赤血球の変形能を向上させ、その作用の強弱が分子種や脂質形態によって異なることが明かとなった。血栓症などの成人病予防が大きな課題となっている今日、EPA,DHA含有リン脂質を合成し、機能の一部を分子種レベルで明かにできたことは意義のあることと考える。
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