研究概要 |
プロスタグランジン生合成経路の律速酵素であるプロスタグランジンエンドペルオキシド合成酵素(PES)のうち,炎症の初期段階におけるプロスタグランジン産生の上昇に関与している可能性が示唆されるPES-2のヒト遺伝子の構造の解析を行った。ヒトPES-2遺伝子の5′上流には、NF-κB,NF-IL6,およびcyclic AMP response element(CRE)にコンセンサスな塩基配列が存在していたので、この領域をレポーター遺伝子(ルシフェラーゼ)の上流に挿入したトランスフェクションベクターを作製した。一方、U937細胞におけるPES-2のmRNAレベルは、未分化状態の細胞では非常に低いが、ホルボールエステル(TPA)でマクロファージ様に分化させるとPES-2の発現が上昇することが明らかになった。そこで、TPAで分化させたU937細胞をもちいてトランスフェクション実験を行った。その結果、挿入した領域にSV40プロモーターの約10倍という強力なプロモーター活性の存在することが明らかとなった。さらに、NF-κB,NF-IL6およびCREの各領域を変異させたものについて検討したところ、CREを変異した場合、野生型の示すプロモーター活性の約20%まで低下した。またU937細胞をTPA処理した後、PES-2遺伝子のCREに特異的に結合する転写調節因子が経時的に増加することが、ゲルシフトアッセイによって確認された。これらのことから、U937細胞の分化の過程におけるPES-2遺伝子の発現に、CREが重要な役割を担っていることが明らかになった。
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