今から二億数千万年前の二畳紀と三畳紀の境界(P/T境界)には地球生物史上最大の大量絶滅が起きたとされている。生物絶滅事件の原因として白亜紀/第三紀においてその境界層にイリジウムの濃集が発見されてから天体衝突説が主張されており、梶原ら(1994)は硫黄の同位体比からP/T境界での天体衝突の可能性を示唆した。私は角和善隆氏(東大教養学部)と共同研究で秩父累帯の天神丸セクション(徳島県)などで採取された、P/T境界の黒色炭質泥岩試料中のイリジウムの中性子放射化分析を行った。黒色炭質泥岩が堆積し始めた時代試料ほどの分析(検出限界は数+ppt)では小天体の衝突を示唆するイリジウムの濃縮は全く見られないことがわかった(角和・豊田、1996)が、路頭での厳密なP/T境界層は確定しておらず、数メートルにも渡る黒色炭質泥岩層からさらに百試料ほど採取して丹念に分析をおこなっている。平成7年10月1日付けで東京大学・大学院理学系研究科から北海道大学・大学院地球環境科学研究科へ転出したために東京大学での研究は不可能になったが、それから一カ月経るうちに環境がある程度整い、北海道大学において研究事業を再開することが可能になったが、こちらでの放射線取り扱いの認可が遅れたためにデータの提出が遅れている。これらの試料中の希土類元素については既に山口大の加藤らがおこなっており、現在化学抽出やその他の微量元素や主成分元素による解析を検討している。
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