本年度に得られた成果は以下の通りである。 1.海産微細藻類感染ウイルスの探索と特性 北海道噴火湾沿岸海水から海産微細藻類の増殖に影響を与えるウイルスの探索を試み、濃縮した海水の0.45μmろ過性画分に渦鞭毛藻、Alexandrium catenella、Gymnodinium mikimotoiおよびProrocentrum sp.の3藻類の増殖を抑制する現象を見出した。A.catenellaおよびG.mikimotoiに対し増殖抑制効果を示すろ過性因子は、今年度(1995年)と昨年度の9月〜10月に採水した海水に認められ、その抑制効果は40〜90%の範囲であった。また、Prorocentrum sp.に対し増殖抑制効果を示すろ過性因子は1993年9月〜10月に採水した海水に見い出され、その抑制効果は20〜30%であったが、今年度は観察されなかった。いずれの藻類増殖抑制因子とも孔径0.45μmおよび孔径0.22μmのフィルターを通過させた後でも抑制効果は持続した。同様の増殖抑制因子は調査を行なった3年間とも9月〜10月にのみ見出され、季節変動が観察された。Prorocentrum sp.、A.catenellaおよびG.mikimotoiの各増殖抑制因子は0.22μm以上の孔径のフィルターを増殖抑制効果の低減なしに通過したが、孔径0.05μmフィルターでのろ過では増殖抑制効果が消失した。さらに、1993年の海水試料から検出されたProrocentrum sp.、A.catenellaの増殖抑制因子は50℃、30分の加熱およびRNase処理により増殖抑制効果が消失した。また、超遠心沈降画分のネガティブ染色像の観察により長さ約400nm、幅約30nmの屈曲棒状のウイルス様構造体が観察された。これらの特性から、本藻類増殖抑制因子が植物ウイルスに多く見られる屈曲棒状のRNAウイルスである可能性が示唆された。 II.海産大型藻類感染ウイルス培養系の構築 マコンブプロトプラストの連続培養系を考案し、プロトプラストの再生率を向上させることができた。この培養系はマコンブ感染ウイルスの分離に応用が期待される。
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