研究概要 |
高エンタルピー風洞の気流診断としてはレーザー誘起蛍光法が現在、広く用いられ、気流中の回転、振動、電子励起温度が明らかにされつつある.しかし、この手法においては流れの並進温度や化学組成、つまり数密度を測定することは難しい.高エンタルピー風洞にレーザー吸収分光法を適用しようという研究もなされているが、吸収係数の大きいアルゴン、酸素流や純酸素流における測定のみで、実際の再突入環境に近い窒素、酸素流に対してレーザー吸収分光法を適用することにはまだ成功していない.そこで本件吸においては高感度のレーザー吸収分光法を確立することを目的とした. 本年はまずマイクロ波放電管による低圧プラズマにキャビティエンハンスト法を適用した.ブリュースター窓と偏光制御器を用いることによって高反射ミラーを真空容器の外に置いたままで低圧プラズマに対してキャビティエンハンスト法を適用し、実効増倍率について議論した.またアーク風洞中のアルゴン気流に0.2%ドープした酸素原子に対してキャビティエンハンスト法を適用し、アルゴン原子よりも2桁程度低い積分吸収係数の酸素原子における吸収プロファイルを得た.その結果、アルゴン原子に対して行ったシングルパスレーザー吸収分光法から得られた温度分布とよく一致し、本手法が高エンタルピー気流診断に有効な手法であることを示した. 高エンタルピー風洞は国内だけでもISAS/JAXAのヒューエル型アーク風洞、JUTEM,九州大学、名古屋大学のコンストリクタ型アーク風洞、ISAS/JAXA,ISTA/JAXAの分割陰極型アーク風洞、誘導加熱風洞など多く開発されている.しかしながら、これらに対して気流診断はほとんどなされていないのが現状である.本研究によって確立された手法を用いてそれらの気流を測定することが可能となった。
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