研究概要 |
近年,高圧送電線・各種の高出力電気機器など強力な電磁源が日常空間に現れ,我々は人類史上未経験の人工電磁環境にさらされている.各国でそれぞれ個別の安全基準が暫定的に設けられてはいるが,国によりその値が大きく異なっているのが現状である.その原因としては,生物学的および工学的根拠に基づく客観的評価法の欠如によるところが大きい. 我々はこれまでの研究をとおし,人体のような複雑な構造に対する電磁界ならびに空間イオン流の曝露量の解析・評価法を確立してきた.またこれまでの動物実験の結果をもとに,電界感知閾値を指標としてヒトにおける影響を定量評価することを考えた.今年度はこれをさらに進め,交直両電界の生体影響の違いについて詳しい解析を行うとともに,電界感知に伴う生理的変化について調べた. まず,人工電磁環境の生体影響の定量解析をめざし,独自に開発した体表刺激反応計測法を用いてヒトに対する電界曝露実験を行った.その結果電界の生体作用の変化を,感知閾値の変化として定量化することができた.またこの定量解析をとおし,電界感知の主因である体表刺激作用が主として体毛の動きによって生ずること,その刺激作用が交流と直流で異なること,またその違いは相対湿度による閾値変化に比べると小さいことなどが明らかとなった.さらに曝露実験をとおし,感知閾値レベルの電界による体表刺激でも,人体に生理的変化をもたらす可能性を示唆する結果を得た.
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