研究概要 |
電力システム計画における多段階意思決定過程の解法としては,一般に,動的計画法(DP法)が用いられる。このとき,最適な将来計画の立案といった時系的な意思決定過程においては,問題自体に必然的に不確実性が内在する。 本研究では,データのあいまい性を直接考慮すると目的関数そのものがファジイ数として与えられることに着目し,メンバーシップ関数間の優越性評価に基づいて最適パスを決定していく,新しいファジイDP法の枠組みを開発した。この新しい枠組みにおいては,解はデータのあいまい性の結果として当然起こり得るであろうある幅を持ったものとなり,言い換えると一つの集合として決定される。この解の集合に属する意思決定は,すべてファジイ環境の下では優劣がつけられないものであり等しく最適解となる。 本研究ではまた,開発手法を電力システムの代表的な計画問題でる貯水池運用計画問題および電源開発計画問題に適用し,その有効性や特徴を明らかにした。貯水池運用問題においては,貯水池への自然流入量,負荷需要をファジイ数とし,貯水量を状態に,時間帯を段に取ったDP法により,貯水池の運用パターンを幅のある解として求めるアルゴリズムを開発した。次に,電源開発計画問題に対しては,将来のコスト(固定費,可変費)をファジイ数として与え,将来の電源構成を幅を持った集合として求める手法を開発した。また,負荷のあいまいさを幾つかのシナリオとして与え,そのどのシナリオに対しても柔軟に対応できるような計画を見い出す手法への拡張も行った。さらに,どの電源をどの段階で運開させるのが最適であるかを,計画から運開までの期間(リ-ドタイム)を考慮して決定するための手法についても開発した。
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