本研究では、相の関係や不変形反応相互の関係を整理・分類し、場合分けを行うことにより、3元系状態図について半自動的な決定や、既往の状態図のチェックが可能なアルゴリズムの構築を目指した。具体的には、3元系状態図が3相三角形によって分割されていることから、これを相の数と等しい角数の多角形に変換し、その多角形を三角形で分割する。固相から成る3相三角形は必ず4相平衡と対応しており、液相の関与した3種類の3相平衡がある温度で合する。それら3種類の3相平衡は2元系の共・包晶を始点もしくは終点としており、液相の組成の温度による変化を示した線により表すことができる。4相平衡も同様に液相の組成変化を表す線の結合によって表すことができるが、これらの線の連結はグラフ理論により隣接行列として記述できる。あり得る三角形分割および各平衡の温度の上下関係は行列式を簡単な手順で操作することで列挙できる。さらに、隣接行列の演算により、すべての3および4相平衡点の関係、すなわち温度の上下関係を記述でき、その上下関係を既往のデータと比較することにより、あり得ない組合せを排除することができる。本研究では3元化合物の存在しない系について、(1)既知の2元系状態図から、あり得る反応経路図を列挙し、(2)状態図に関する実験的研究結果・熱力学的計算結果などから得られる限定条件を盛り込むことにより、反応経路図を絞り込む、という、今後の拡張のための原型となるアルゴリズムを実現した。 組合せ総数は相の数が8程度と比較的少ない場合でも100万通りを越すことから、大量のデータを迅速に処理し、かつ保存できる必要があると同時に、アルゴリズム上の工夫によって全てを計算し照合するのではなく、ある程度実験結果から計算条件を限定することを行った。これにより、計算総数を大幅に圧縮することが可能となり、最適の場合2桁もの減少が見込める。
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