今回の研究では日本語習得と教室適応の両面から、公立小学校における外国人子女とそれをとりまく状況を把握することを目的とした。4人の外国人子女を対象に日本語の取り出し授業と学校生活の参与観察行った。さらに、外国人子女の多い小学校、全国のボランティア団体にアンケート用紙を配布した。その結果以下のことが明らかになった。 (1)来日直後の約1年間という期間で見た場合、外国人児童が学校及び教室に適応する過程は一直線ではなく、はじめは比較的快適に過ごしていたものが、途中、緊張とストレスが高まり、その時期をすぎると初期のころよりも快適に過ごせるようになるという適応のUカーブを描いている場合がある。(2)外国人児童の学習及び人間関係に決定的な影響を与えるのは外国人児童の日本語習得と日本語が習得できたという実感である。一人の児童は以前クラスメートとトラブルが生じたのは自分が日本語ができなかったからだと振り返っているし、もう一人は友達ができたのは日本語ができるようになったからだと感じている。(3)日本語習得に関しては、日本語使用環境、転入年齢、父母の価値観の影響が大きいことが予想される。2人の児童の習得が順調であるのに対し、あと2人の習得が遅れた大きな原因は、前者は日本語で過ごさなければならない場面がより多い、前者の父母は日本語ができるといった日本語使用環境の差にあることが予想される。また、日本人児童と同時期から文字指導を受けた後者は一見有利に見えるが、事実はそうではない。(4)公立小学校における外国人児童の日本語指導方針は全く確立されていないため、対応は個々の学校、担当者の裁量にまかされている。同じ市内の学校でも実際の日本語指導の期間、時間数が異なるし、指導が行われていないところもある。重点校にも統一の基準はない。
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