研究概要 |
分子性導体であるNi(dmit)_2とクラウンエーテルの組合せを中心に、カウンターカチオンとしてLi^+,Na^+,K^+,Rb^+,NH_4^+,Cs^+を用いて、錯体形成を行った。多くの組合せにおいて、イオンチャネル構造が出現した。クラウンエーテルとの間の錯形成定数が小さいイオンを用いると、イオンチャンネル構造が形成しやすいことが判明した。実際に、結晶作製時の溶媒を変え、錯形成定数を変化させるて、イオンチャネル構造を持つ錯体を優先的に晶出させることも可能であった。 イオンチャンネル内へのイオンのド-ピング(バンドフィリング制御)は、Cs^+錯体について、結晶作製条件を変化させることで可能であった。 イオンチャネル構造が出現しない錯体についても、結晶内で特異な構造をもつ超分子イオン場が形成されることが明らかとなった。 クラウンエーテルだけでなく、直鎖のポリエーテルを用いても結晶内に類似の超分子イオン場が形成した。 中心金属として、Niの代わりにPd,Pt,Auを用いた系を検討した。結晶構造の解析には至らなかったが、結晶内にクラウンエーテルが取り込まれることを確認した。 結晶の電気伝導特性と超分子イオン場の構造との間に相関が見られた。特に、イオンチャンネル内のイオンの動的挙動に伴い、電気伝導挙動が変化する系も存在することが示唆され、将来の分子デバイス構築へ向けての展開の足がかりが得られた。
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