Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
本研究は、学習障害や言語発達遅滞を有する児童の言語発達を促すための方法論について臨床心理学的視点から検討を行ったものである。言語発達に障害を有するクライエントに対する個別遊戯療法、心理劇の技法を取り入れた集団療法場面でのセラピストの援助行動特徴の比較を行った結果、両セラピー場面でのセラピストの相互作用特性に違いが認められることが明らかとなった。すなわち、個別セラピーにおいては、クライエントに対する行為の促しやモデリングのなどの活動への「誘いかけ」、セラピスト自身の気持ちや行動を言語的に明確化して表現するセルフト-クやこどもの気持ち・行動を言語的に明確化するパラレルト-クなどの「叙述」といった言語行動が多かったことが明らかとなった。一方、集団療法においては、こどもから情報を引き出すように質問したり、その場の状況をわかりやすくこどもに説明し、理解を深めるための「確認」という言語行動がセラピストから多く遂行されていたことがわかった。これらの結果から、セラピストは個別・集団という異なるセラピー環境において、クライエントとの相互作用の様態を変え、クライエントに併せて自分の行動を微調整し、クライエントの自発的な言語行動を引き出すべく努力していたことが示された。