研究概要 |
目的:皮質性視覚障害(Cortical visual impairment:CVI)を呈する重症心身障害児・者(以下、重症児・者)の視覚評価方法を確立し、リハビリテーションの手法を導くこと。方法:日常的には視覚をほとんど用いていないとされているCVIを呈する重症児・者9例(4〜35歳:平均年齢13.8歳)に対して、各空間周波数(0.125,0.25,0.5,1,2,4 cycles/deg)ごとのコントラスト感度をOKN(optokinetic nystagmus)法と一窓式TAC(Teller Acuity Cards)法を用いて測定した。OKN法は、視察法とENG(electronystagmography)による記録の2種類の方法によって施行した。また、OKN法の妥当性を検討するために3例に同様の刺激に対する瞳孔近見反応による測定を試みた。結果:OKN法は8例で測定可能であったが、一窓式TAC法は一例のみ可能であった。ほとんどの症例において、コントラスト感度曲線は低空間周波数領域と高空間周波数領域で低下を示し、中等度空間周波数領域では比較的良好であった。また、ほとんどの例で視察法とENGによる記録では、後者の方がより高い感度を示していた。さらに、OKN法による結果は、瞳孔近見反応の結果ともほぼ一致していた。 考察:OKN法によるコントラスト感度の測定は、9例中8例に施行でき、これらの重症児・者に視覚能力が存在することが確かめられた。視覚のリハビリテーションでは、コントラスト感度の測定結果から高い感度を示した特定の周波数成分を豊富に含む刺激を用いることによって、CVI児にとって見やすい刺激環境を提供することができると考えられた。
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