研究概要 |
宇宙機の耐熱材開発のために,プラズマ風洞が大気圏突入時の加熱環境模擬装置として用いられている.そのプラズマ流は熱的に非平衡であることが知られており,詳細な温度計測が求められる.各種温度の中でも,並進温度は重要であるが,その計測は容易ではない.並進温度はドップラー拡がりとして線拡がりスペクトルに現れるが,プラズマ風洞ではその拡がりが数pm程度と挟線幅であるため,一般的な発光分光や二光子吸収レーザー誘起蛍光法では正確に測定できず,挟線幅なレーザーを用いた半導体レーザー分光計測が必要とされる.本研究では,レーザー吸収分光法とレーザー誘起蛍光法により,並進温度計測を試みている.レーザー吸収分光法では微小吸収量計測および点計測を可能にすることが求められ,またレーザー誘起蛍光法では光学的に厚いプラズマへの適用が求められる.本年度では,レーザー吸収分光法による並進温度の点計測と,光学的に厚いプラズマにおけるレーザー誘起蛍光法の補正方法の開発に取り組んだ.点計測では,クロスビーム飽和吸収分光法による並進温度計測を世界で初めて実証した.これにより,従来用いられていたアーベル変換などのデータ再構築法が不要となり,今まで測定不可能であった衝撃層内へもアクセスが可能になった.この計測法は軸対称性を必要とせず,CVDプラズマや電器推進器プラズマなど,他のプラズマ診断への適用も期待される.光学的に厚いプラズマにおけるレーザー誘起蛍光法では,得られる蛍光プロファイルが真のプロファイルよりも拡がってしまうが,レーザー吸収分光法と組み合わせながら,その拡がりを補正することが可能であることを示した.この方法は軸対称なプラズマ流の中心軸上の温度のみ取得可能であるが,プラズマ風洞の気流診断では気流中心の温度が重要であるため,アーベル変換を用いずに中心軸上の1次元温度分布を取得できることは有意義である.
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