「リパーゼはアシルトランスフェラーゼ」であるという概念を検証するため、種々のリパーゼを精製した。ラット膵臓より膵リパーゼ、ブタ膵臓よりコレステロールエステラーゼ、牛乳よりリポ蛋白リパーゼおよび微生物(Pseudomonas fluorescens)由来のリパーゼを購入したクロマトグラフィーシステムを用いてを大量精製した。 まず、大量精製した膵リパーゼおよびPseudomonas fluorescensのリパーゼを用いてワックスエステル(palmityl oleate)の合成/分解反応を水溶液中で解析した。中性pHでは反応はエステル合成反応にかたよっていた。oleic acidとhexadecanolエマルジョンを基質としてエステル合成反応を測定した場合、palmityl oleate/oleic acidの比は0.9/0.1であった。また、Palmityl oleateを基質として加水分解反応を測定した場合もpalmityl oleate/oleic acidの比は0.9/0.1であった。この平衡は反応pHや脂肪酸の炭素鎖長に依存した。アルカリpHや脂肪酸の炭素鎖の鎖長が短くなれば平衡はエステル分解の方に変化した。基質としてトリアシルグリセロールとhexadecanolを用いた場合も、同様な結果が得られた。さらに、リパーゼとしてコレステロールエステラーゼ、リポ蛋白リパーゼ、舌リパーゼ、Mucor属、Candida属、およびRhizopus属のリパーゼを用いた場合も同様な結果が得られた。またレチノールやコレステロールなどの種々の脂溶性アルコールに対してもリパーゼはエステル合成反応をおこなった。反応解析により、リパーゼはアシル中間体を経て水を含む種々のアルコールにアシル基を転移するアシルトランスフェラーゼであるとの結論に至った。
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