本年度は、研究課題のテーマの一つであるハイパー核の同定に関して、_<ΛΛ>^4Hのπ放出弱崩壊の研究を進めた。その背景としてBNL-E906実験で_<ΛΛ>^4Hからの弱崩壊π^-を観測したとの報告がなされていることが挙げられる。 _<ΛΛ>^4Hは、予言されている最も軽いダブルΛハイパー核である。その存在は、ΛΛ間力が引力であるという強い示唆を与えるとともに、通常核での重陽子の役割のように、ストレンジネス-2核の研究の礎となろう。その意味で、実験結果を理論的に検証することは重要である。本研究では、理論的に計算した_<ΛΛ>^4Hの弱崩壊π^-の幅とスペクトルを、上記実験データと比較することに焦点をあてた。崩壊幅に関しての結果は、2000年秋の日本物理学会で、スペクトルも含めた結果については、2月にソウルで行われた国際シンポジウムでオーラルに選ばれ発表した。 計算の枠組みとしては、インパルス近似を用い、3、4体系の束縛状態に関しては、組換えチャンネル結合法を用いて変分的に求めた。散乱状態は、各チャンネルにおいて、πを除いた核と放出粒子をいう2体問題として考え、そのポテンシャルは、上記で解かれた束縛状態の波動関数を用いて畳み込んだものを使った。この手続きはシングルΛ核のπ弱崩壊で行ってきたこれまでの手法を踏襲しており、その理論計算は実験結果と良く対応していた。しかし今回の理論計算は、実験結果を再現しない。それは、結果として実験データに他の反応の寄与が混じっていることを予測させる。これらの議論と、他の_<ΛΛ>^4H生成過程とユニークな同定に関わる議論を現在それぞれ投稿準備中である。
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