研究概要 |
重合系の成長ラジカルと相互作用し得る光学活性金属ラジカル種を設計、合成し、ラジカル重合系に添加して生成ポリマーの立体構造に与える影響について調べた。金属ラジカル種としては光学活性な(R,R)-N,N-ビス(3,5-tert-ブチルサリチリデン)-1,2-シクロヘキサンジアミナトコバルト(II)および銅(II)を用い、トルエン-ピリジン(95/5)中あるいはテトラヒドロフラン-THF中でα,α'-アゾビスイソブチロニトリルを開始剤とするN-シクロへキシルマレイミド(cHMI)のラジカル重合について検討した。コバルト錯体存在化で生成したポリマーには主鎖の不斉炭素の絶対配置の偏りに基づくと考えられる旋光性および円偏光二色性スペクトルが観測された。光学活性コバルト錯体の影響でラジカル重合中に主鎖に不斉誘導がおきたことが示唆された。この重合反応は、コバルト錯体存在下ではラジカル禁止剤であるTEMPOを加えても進行し、また、モノマーとコバルト錯体の溶液を室温に放置するだけでも効率良く進行した。この事から、重合機構にはフリーラジカル重合種は含まれておらず、また、モノマーとコバルト錯体の相互作用により活性種が発生することが示唆された。銅錯体はコバルト錯体ほどの不斉誘導効果は示さなかった。
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