研究概要 |
1.「狭義」と「広義」としてのアクションリサーチ アクションリサーチはよい授業を創り出そうとするものであり,どの実践にも共通していることは各教育実践の中にある「切実な課題から出発する」といったことから始まることに大きな特徴を持っている点である.その中で,あくまでも「教師(当事者)自身」が自らの実践を,自らの観察と省察・内省を通して解決を求めていといったアクションリサーチを「狭義」のアクションリサーチとして位置付けられる.さらには,教師(当事者)自身だけではなく,同僚教師や外部の授業観察者も含めた上で共同の実践を創り出していくといった,第三者をも含み込んだ中で行われるアクションリサーチを「広義」のアクションリサーチとして整理をした. 2.教師の意思決定の抽出 小学校4年生の体育授業実践において共同的なアクションリサーチ(広義)を試みた.そこでは,教師および同僚における各実践後の実践記録やインタビュー記録,実践期間中の対話記録等を資料として,教師が行った授業内容の流れに沿った意思決定場面の抽出を行った.その結果,対話記録にみられた内容の変化に,「技術的な練習の提示」→「提示の取り込み」→「同僚への問い」→「同僚との共同決定」といった流れをみることができた.このことは,同僚のスタンスが授業システム内の教師と同じスタンスに立つことはあり得ないが,「in action」といった状況で展開させることと同時に「対話」を軸に取り組むことで,同僚と教師は「文脈性」「共時性」という特徴をもった他者と共有された事象をもとに創造的な授業が創られているということを意味していると考えられる. 今後はこれらの成果をもとに,教師の成長といった側面を加味した上で,具体的事例を基にしながらアクションリサーチ研究を継続していきたいと考えている.
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