研究概要 |
植物個体レベルの葉/根比(L/R)、葉の厚さ(LMA)や葉面積あたりのN濃度(Narea)などの炭素(C)・窒素(N)分配パターンは、光環境に応じた葉のN需要および土壌からのN供給に応じて、相対成長速度(RGR)を最大化させるように調節されていることが示唆されている(Sugiura & Tateno 2011)。本研究では、このような環境変化に応じたCN分配パターンを制御するメカニズムについて、植物ホルモンの役割に焦点を当て、(実験1)外生植物ホルモンの添加実験、(実験2)環境変化に応じた内生植物ホルモンの定量的解析、を行なった。 (実験1)において、外生植物ホルモンとして、ジベレリン(G,GA3)、サイトカイニン(B,ベンジルアデニン)、ジベレリン合成阻害剤(U,ウニコナゾール)を用い、これらを単体、または組み合わせて植物体全体に添加する実験を行った。これらの植物ホルモン処理によって、個体レベルでの葉面積あたりの葉の重さ(LMA,gm-2)やL/Rが大きく変化した。また、このような形態的特性の変化と連動して葉のNareaが変化し、光合成速度や純生産速度といった生理的特性が変化した。個体全体のRGRは主に形態的特性の変化で説明されたことから、環境変化に応じたこれらの植物ホルモンによる形態的特性の制御によって、RGRが決定されていることが示唆された。 (実験2)では、イタドリを、コントロール群は3段階のN条件(HN、MN、LN)で生育させたのち、HNはさらに摘葉(Def)、低N(LowN)、弱光(LowL)処理をし、1週間生育させた。これらのグループごとに、葉位ごとの、生理的形質、CN含量、バイオマス分配、内生の植物ホルモン量(GAs:ジベレリン、CKs=サイトカイニン、IAA:オーキシン)の測定を行った。コントロール群では、N条件が高いほど葉/根比が大きく、GAs量も高かった。処理群では、Def、LowL、LowNの順に、葉へのバイオマス分配比が大きいほど、GAs重も高かった。これらの結果からも、植物体はN条件や光条件の変化に対して、内生植物ホルモンの量を変化させることで葉根比を調節している可能性が示唆された.
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