研究概要 |
NADPHオキシダーゼは好中球・B細胞に存在し、スーパーオキサイドを生成する酵素として知られている。このオキシダーゼコンポーネントの欠失、突然変異は慢性肉芽腫症(CGD)として知られ、重篤な免疫疾患を示すことから、NADPHオキシダーゼは感染防御にとって非常に重要であると認識されている。この酵素は細胞膜に局在する p22^<phox>Tとgp91^<phox>、細胞質に局在するp47phox、p67phoxならびにracから構成されることが知られている。活性化に際しては、FcRやFMLP刺激によって活性化したprotein kinase C(PKC)がp47^<phox>のC末端領域のリン酸化を促し、リン酸化p47^<phox>の二つのSH3ドメイン(SH3A,SH3B)とプロリンリッチ領域(PRR)が、それぞれp22^<phox>とP67^<phox>と結合し、膜に会合し、活性を表すと考えられている。また、p38MAPK、ERKなどのMAP kinaseもこの活性化に関与することを本年度の結果として明らかにされた^<1-3)>。本研究ではシステイン残基をターゲットとしたスピンラベル法を用い、リン酸化に伴うp47^<phox>の構造変化を部位特異的スピンラベル法を用い解析した。 3-maleimide-proxylをスピンプローブとして用い、pGEX-1λT発現系で作成したp47phoxのシステイン残基をスピンラベルを行った。PKCによってリン酸化に伴うp47^<phox>の構造変化のX-band ESRを用いて解析を行った。既に、[^3H]N-ethylmaleimideを用いC196とC378にラベルされることが明らかとなっている(Park and Babior,Biochemistry,1997,34:7474)。そこで、アラニンへの突然変異を起こさせたC378A p47phoxとC196A p47^<phox>を作成し、それに対してスピンラベルし、ESR法で活性化刺激に伴う構造変化を観察した。 wild type47^<phox>のESRスペクトルはラベルされたN-oxylの早い運動を示すunimmobilizedコンポーネントと運動の抑制を示すimmobilizedコンポーネントが観察された。C378Aの変異蛋白ではunimmobilizedコンポーネントのみが消失し、C196Aの変異蛋白ではunimmobilizedコンポーネントのみが消失したことから、unimmobilizedコンポーネントはC379に由来し、immobilizedコンポーネントはC196Aすることが明らかとなった。また、このC末端C379に由来するコンポーネントはPKCによりリン酸化されることにより運動性が抑制されることが明らかとなった。同様の現象は、NADPHオキシダーゼ活性化刺激であるSDSまたはアラキドン酸で観察された。以上の結果は、p47^<phox>のC末端領域の構造変化が、活性化刺激剤により構造変化を起こすことが明らかとなり、この構造変化がp47^<phox>の膜への移動やp67^<phox>との会合と関連する可能性を示唆している。また、SH3ドメイン近傍にラベルに由来すると考えられるimmobilizedコンポーネントはこれらの刺激で有意なスペクトルの変化は見られなかったが、現在、ESR飽和移動法の確立を試みている。3-maleimide-proxylラベルしたBSAのグリセロール溶液をモデル系として用い、τが10^4〜10^7secの非常に遅い、温度依存的な回転の運動について解析が可能となった段階である。今後、このESR飽和移動法によりp47phoxのimmobilizedコンポーネントについて解析を進める予定である。
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