研究概要 |
魚類筋原線維タンパク質(Mf)分子中にメイラード反応を利用してアルギン酸オリゴ糖(AO:平均重合度6)を導入し,ネオグリコプロテインを調製した。そして,AO修飾によってMfの諸機能(低イオン強度溶媒に対する溶解性,熱安定性,乳化能,消化性)がどのように変化するか検討した。また,AO修飾したMfの食品衛生学的安全性について調査した。得られた結果を以下に示す。 (1)AO修飾によってMfの低イオン強度溶媒に対する溶解性は著しく向上し,0.05M-0.5Mの広範な塩濃度下では塩濃度に依存せずに溶解するようになった。 (2)AO修飾によってMfの熱安定性は飛躍的に改善された。すなわち,AO結合量が200μg/mgを越えると,Mfは80℃で2h加熱しても全く不溶化しなかった。なお,この熱安定性の改善はpH4.5<で確認できた。 (3)Mf-AOはAO結合量の増加に伴って優れた乳化活性、乳化安定性を呈し,その機能改変効果は加熱処理によっても損なわれなかった。 (4)水溶化,熱安定性,乳化能の改変が達成できたAO結合量の範囲では,Mfの消化性の低下は起こらなかった。 (5)レック・アッセイとエイムス・テストによってMf-AOの変異原性試験をおこなったところ,変異原性の存在は確認できなかった。さらにラットを用いた急性毒性試験では,Mf-AOに顕著な毒性は認められなかった。 以上,本研究の結果から,AO修飾が食品素材としての魚類筋肉タンパク質の機能を改変する極めて有効な手段であることが確認できた。
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