| 研究概要 |
気泡運動を利用したマイクロポンプの作動原理を理解するためには,気泡運動により誘起される周囲流体挙動を解析することが必要である.特に,今年度は気泡運動が比較的単純な場合についてのみ検討することにより,基礎的データを取得することを目的とした.そのため,モノポールとダイポールがそれぞれ支配的な流れ場について考察を行なった.
気泡運動として径方向運動(モノポール)が支配的な流れ場に関しては,より複雑な流れ場を形成し得る気泡群の挙動により誘起される周囲流体,特に形成される圧力場に関して考察した.多数の気泡が液体中のある領域内に高い密度で存在する気泡群の場の圧力の変動に対する挙動を,多重極展開法・摂動展開法に基づく数学モデルを構築し数値計算を行なった.気泡群の線形圧力応答を解析することにより,少数の気泡が存在すれば,連続体モデルにより予測される音響特性を生じることが確認された.また,離散モデルを用いて,気泡群周囲圧力を急激に上昇させることにより気泡群内の気泡を収縮させる,キャビテーション気泡群崩壊の単純モデルを提案した.
並進運動(ダイポール)が支配的な流れ場を解析するためには,最も単純な場合であると考えられる同一直線上を上昇する気泡による流れ場解析を有限要素法による数値シミュレーションにより行なった.DSD/ST(deforming-spatial-domain/space-time)有限要素法を用いて,直線上に配置された複数個の気泡が静止流体中を浮力により上昇する挙動に対して解析を行なった.表面張力が小さくなると気泡の変形が大きくなり,上昇速度は低下する.この変形は先行気泡の方が後続気泡に比較して大きいことが確認された.また,十分表面張力が小さい場合には先行気泡の後流が後続気泡を包み,二気泡間の圧力が低下し引力が働いていることが観察された.
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