研究概要 |
本年度は,前年度開発した基本ツールを用い,以下の点について重点的に研究を行った。 (1)前年度に開発した手法は,ある一時間断面で注入可能電力を評価し,それに基づいてネットワーク運用・計画を行うものであった。本年度は,すでに開発した手法を,複数時間断面を考慮できるように拡張すると共に,さらに,送電線における事故確率などを組み入れた上で,ネットワークの増強箇所,その時期などを総合的に評価するアルゴリズムを開発した。 (2)注入可能電力を最大化する決定変数として,位相器,UPFCなどのパワーエレクトロニクス機器を適切にモデル化した上で開発手法に組み込み,その影響・効果を詳細に解析した。 (3)ある送電線を拡張した際に得られる注入可能電力の増加量を感度解析により算出する手法を開発した。感度解析を用いて算出する注入可能電力の増加量は大きな誤差が生じることから,送電線を拡張する場合にそのまま本手法を適用するのではなく,安定度制約により実際の線路容量よりも線路の上下限制約が狭い範囲に設定されているような箇所に適用することが考えられる。これは,規制緩和の導入に伴い重視されつつある,既存の設備を有効利用することで設備投資の効率化を行うという風潮にも当てはまることから、利用価値のある考え方と思われる。 (4)将来の不確定性を考慮した送電線増設効果を示す指標(CSR)の開発を行った。起こりうる将来のシナリオを複数考慮し,どのシナリオの発生確率も同等であると仮定していることから,多少現実味のない指標であるという感はいなめないが,規制緩和環境下における将来のシナリオというものは全く未知なものであり,全ての参加者に納得をさせ,設備の有効利用にもつながるこの指標は,公共的な役割を担うUtilityの設備計画において有用であると思われる。
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