研究概要 |
本年度は昨年度の研究を踏まえ,誘導体化LC/MSを各種生体内ステロイドの分析に導入し,以下の成果を得た. 1.アンドロステンジオール(A-diol)は主に3位硫酸抱合体として血中に存在しているが,近年,前立腺癌との関連が注目されている.硫酸抱合型A-diolには3位のほか,17位抱合体の存在も考えられるが,脱抱合を伴う従来の同定法では抱合位置が不明確であった.そこで血中から抽出した本アンドロゲンを直接,あるいは無水酢酸-ピリジンを用いてアセテートへ誘導体化後,LC/ESI-MSにより分析し,誘導体化前後でのクロマトグラフ的挙動及びマススペクトルを標品のそれと比較した.その結果,大量の3位抱合体のほか,17位抱合体も微量ながら存在することを確認した. 2.遊離型A-diolのLC/ESI-MSによる高感度分析を目的としてメチルピリジニウム誘導体化し,正イオンモードでの検出を試みた.その結果,必ずしも高感度化は達せられなかったが,これは誘導体化率にも起因すると考えられることから今後に期待される. 3.先に著者は,ラット脳内にカテコールエストロゲンが存在することを,無水酢酸-ピリジンによりアセテートへ誘導体化後LC/MSを用いて同定した.しかし生体内にエストロゲンがエステル体として存在することが報告されている.そこでラット脳よりエストロゲンを抽出後,重水素標識無水酢酸-ピリジンを用いて誘導体化しLC/MSで分析したところ,カテコールエストロゲンアセテートは検出されなかった.以上のようにして同定したカテコールエストロゲンが内因性のアセテートではなく,カテコール体として脳内に存在していることを確認した.
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