研究概要 |
1.塩基配列情報に基づくチャタテムシおよびシラミの系統解析 昨年度および本年度収集したDNA解析用の約50サンプルからDNAを抽出し,ミトコンドリアの12Sおよび16SrDNAをPCR法を用いて増幅し,これに基づき系統解析を行った.最節約法,近隣結合法,最尤法いずれの方法を用いても,シラミ目の姉妹群がチャタテムシ目コナチャタテ科である事を強く支持する結果が得られた.さらに,シラミとコナチャタテのミトコンドリアゲノムが,置換速度,二次構造,GC含有量において,他の昆虫のミトコンドリアには見られない特異な進化傾向を持つ事を明らかにした.これらの結果は,アメリカIllinois Natural History SurveyのKevin P. Johnson博士との共著論文としてMolecular Phylogenetics and Evolution誌に投稿中である. 2.シラミの分類学的再検討 日本産フクロウハジラミ属を,上記サンプルおよび九州大学から借用した内田コレクションに基づき分類学的に再検討した.その結果,多くの同定ミスと未記載種の存在を明らかにした.さらに,フクロウハジラミ属が,寄主-寄生者の関係において,多くのハジラミ類に見られるような一対一の関係が見られず,さらには亜科を越えるような非寄主特異性が存在する事を明らかにした.これらの結果は,宮城教育大学の溝田浩二氏と共同で,日本昆虫学会第62回大会において口頭発表した.
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