研究概要 |
昨年度の研究の結果,ジオシンセティック排水材に浸出水を長期間通水していると,間隙が閉塞し,通水能が低下していく事を確認した.本年度は,昨年度の研究を継統し,浸出水中のスケール生成ポテンシャルが排水材の通水能に与える影響について検討した.排水材の物理的目詰まり以外の主要な閉塞要因は,CaCO_3沈殿が排水材繊維に付着堆積することと考えられたが,このCaCO_3沈殿の生成式は,(Ca^<2+>+2OH^-)+(2H^++CO_3^<2->)→CaCO_3+2H_2Oで表され,この式が平衡状態になるときのpH(飽和pH[pHS])は,pHs=pCa^<2+>+pAlK+(pK_2'-pK_s')で表される.そこで,実験には浸出水のLIの異なる5種類の試料水(A, B, C, D, E)を作成して通水実験を行い,浸出水の水質による通水能の低下について検討した.試料水は毎週作成し,水質の分析を平行して行った.試料水のLIの経日変化は,(A)埋立地浸出水原水および(B)高Ca浸出水はおよそ2で推移し,常にCaCO_3沈殿の生成域にあった.(C)高pH浸出水および(D)焼却灰浸出水も常に正の値を示しCaCO_3沈殿の生成域にあったが,(C)がおよそ4で推移したのに対し,(D)は6週目までは2〜5の範囲で変動し,7週目以降は6以上と更に大きい値を示した.一方,(E)低pH浸出水は1〜5週目では弱酸性(pH=4〜6,6週目以降はpH=3以下)であり,LIが負の値でCaO_3沈殿の溶解域であった.各試料水を用いた場合の排水材の透水係数の経日変化は,(A)および(B)では通水開始後日を追うにつれてKsの低下が見られた.これは,常にCaO_3沈殿の生成域にあることからCaCO_3殿の付着堆積による間隙閉塞が起こったと考えられた.(C)では通水開始直後から著しくKsは低下した.(C)は(A)にNaOHを添加して作成したものであり,pHが中性の(A)において過飽和にあったCaイオンが高pH化することによってすぐに沈殿したためと考えられた.(D)では6週目までは初期値を維持したが,LIが大きくなった7週目以降著しいKsの低下が見られた.(E)では5週目まではKsは低下したが,pH=3以下にした6週目以降には,Ksが上昇傾向を示した.以上のことから,浸出水のLIが正の値でCaCO_3沈殿が生成域にあれば,沈殿の付着堆積によって排水材の間隙が閉塞し,通水性能は低下することが確認された.また,今回の実験では,(D)は何らかの阻害物質によってUが過大に評価され,反対に(E)は過少に評価されたものと推察された.
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