研究概要 |
山岳地における屎尿処理の影響の評価には、利用者の動態の把握が基礎的情報として欠かせない。しかし山岳地の利用者の把握は、気象条件や地理的条件により制約も多く、役所の統計等のみでは不十分な場合が多い。そこで利尻山の登山口に無人の赤外線カウンターを設置し、1シーズンをとおした登山者数の把握および手法上の問題点を探った。また、屎尿の散乱が見られる場所、登山道の崩壊が著しい場所を記録するために、GPSを用いて地図上に記録した。 夏期の2002年6月18日から8月16日までに鴛泊コースを往復する登山者数は約8,500人と推察された。6月下旬から7月上旬の週末に集中した。時間帯では午前5時台、次に午後3時台が多く、午後9時から午前3時までの夜間にも登山者が計測され、山頂より日の出を見るために夜間に入山する登山者が少なくないことが明らかとなった。 GPSによって記録した、植生が踏みつけられ、大便や使用済みの紙が散乱していた場所と、登山道の崩壊が著しい場所を地図上に記録した。用便が確認されたのは、鴛泊登山口から分岐の間で18箇所(避難小屋周辺含む)、沓形登山口から分岐の間で4箇所(避難小屋周辺含む)、および山頂付近であった。登山道上でもっとも幅員が大きかったのは、沓形コースとの分岐点から直上部の8.6mであった。最も深く登山道が洗掘されていたのは、その上部で、V字型にえぐれ、3mの深さがあった。いずれも火山礫が主体となる標高1,450mから上部である。また利尻山頂上直下では登山道脇の崩落が進んでおり、登山道の幅が1mに満たない箇所もみられた。 赤外線カウンター、GPSを用いることによりインパクトの大きい場所の特定や登山者の動態の把握が可能となり、今後の山岳地管理に有用な情報が得られた。その一方で、カウンターの計測ミスなどの問題も明らかとなり、さらに検討が必要と思われた。
|