研究概要 |
検索サイトを用いた調べ学習を実験課題にして,課題の要求と検索領域に関する知識度を操作して実験を行った。「課題の要求」とは検索を行う目的に相当しており,被験者はそれぞれ(a)自由に検索するように教示された条件,(b)検索後に多肢選択テストが課せられることを予告された条件,(c)検索後にレポート課題が課せられることを予告された条件が設定された。検索テーマは教育に関する現代的な問題であり,知識度は教員採用試験を受験した学生かどうかで判断された。実験結果より,課題の要求によって検索方略が大きく変化し,また,検索領域に関する知識によっても方略が変化したことが示された。 次に,シンガポールの小学校,中学校に赴いて,インタビューと質問紙調査を行った。 この調査では,(1)情報機器が授業の中でどのように活用されているかを視察し,(2)受験圧力と学習方略の関連性について考察した。これらの調査は,シンガポール国立教育研究所(南洋工科大学内に併設)のEsther Tan教授の協力の下に行われた。シンガポール教育省からの通達で,全ての教科で30%以上の内容をITを活用した授業を行う努力目標が掲げられているが,実際には日本と同様にそれほど活用されているわけではなかった。若手教員を中心に情報機器導入の意欲は低くはないが,これまでと同様に授業を丁寧にすることが重視されていた。むしろ,情報機器の不自然な導入は,一般市民の子弟が通うような公立校ではなくて,先進的な教育技術の導入を意識的に行っている先端校で多く見かけられ,必ずしも有効に機能しているわけではないことも示唆された。
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