研究課題/領域番号 |
14360093
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
林産学
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤川 清三 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (50091492)
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研究分担者 |
船田 良 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (20192734)
佐野 雄三 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助手 (90226043)
荒川 圭太 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (00241381)
竹沢 大輔 (竹澤 大輔) 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (20281834)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2004
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研究課題ステータス |
完了 (2004年度)
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配分額 *注記 |
14,700千円 (直接経費: 14,700千円)
2004年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2003年度: 3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
2002年度: 8,200千円 (直接経費: 8,200千円)
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キーワード | 北方樹木 / 凍結抵抗性 / 遺伝子工学 / 低温耐性遺伝子 / 脱水抵抗性 / 過冷却 / 不凍タンパク質 / 氷核形成阻害物質 / 深過冷却 / 木部柔細胞 / 凍結適応 / 低温誘導性遺伝子 / 低温誘導性蛋白質 / 低温馴化 / 細胞壁 / 可溶性糖質 / 冬季誘導性遺伝子 / 不凍蛋白質 / ノーザンブロツト解析 / 形質転換植物 |
研究概要 |
北方樹木の寒冷環境適応機構を分子レベルで研究を行った。樹木構成細胞は組織により、冬季の樹幹内水分の凍結に対する適応機構が異なり、師部組織柔細胞は細胞外凍結による適応をするのに対して、木部組織柔細胞は深過冷却という凍結回避により適応する。 細胞外凍結では、凍結脱水に対する抵抗性を獲得することにより、北方樹木の師部柔細胞は液体窒素温度の凍結にも耐える。このような高い凍結耐性を持つ北方樹木、クワの皮層柔細胞内の小胞体(ER)にグループ3Late Embryogenesis Aboundant (LEA)タンパク質が,冬季特異的に蓄積することを明らかにした。このタンパク質をWAP27と命名し、その機能を解析した。WAP27を導入した形質転換シロイヌナズナは植物体レベルで凍結耐性が上昇する事、および単離・精製したWAP27は凍害防止剤として高い活性を持つことを明らかにした。 一方、北方樹木の木部柔細胞は、細胞内水分が液体状態のまま-60℃付近まで過冷却して氷点下温度に適応するという樹木特有の特徴的な適応機構を示す。この機構、すなわち水が安定的に-60℃付近まで凍らない機構を明らかにするため、冬季特異的に発現する遺伝子のフイルター・アレイおよびディファレンシャル・ディスプレイ法による解析、冬季特異的に蓄積するタンパク質の解析、冬季特異的に蓄積する可溶性糖質の解析を行った。樹木木部の網羅的な遺伝子解析は、世界初と思われる。カラマツを用いた遺伝子解析により植物においてはこれまでに報告されていない低温誘導性遺伝子を10数個明らかにした。これらの冬季特異的な遺伝子発現はノーザン・ブロット法により過冷却能力の変化と並行的に発現することを確認した。ブナを用いたタンパク質解析により、季節的および各種処理による過冷却能力の変化と並行的に発現する20数個のタンパク質スポットを確認した。これらのうち、既存の報告で、過冷却を促進する可能性のある不凍タンパク質と高い相同性を示すタンパク質を単離・精製して不凍活性を調べたが顕著な不凍活性は得られなかった。可溶性糖質については過冷却する木部特異的に蓄積する糖はシラカンバを用いた研究では得られなかった。しかし、木部から80%エタノールで抽出した粗画分は、これまでの報告には無い高い過冷却能力を持つことを明らかにし、引き続き物質の同定を行っている。 北方樹木由来のこれら物質は、高凍結抵抗性植物の作出、及び凍結制御剤として広範な産業的応用が期待できる。
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