研究概要 |
本研究では,より詳細かつ正確な上部マントル内部の3次元不均質構造を探るために,不均質媒体を伝播する表面波の散乱・回折といった複雑な効果を考慮した新しいインバージョン法の開発と応用を主な目的としている.昨年度に引き続き,新手法の新しい理論とその数値計算手法の開発を行い,その成果は既に主要国際誌に投稿している.この方法では,波線周辺領域からの散乱波の影響も考慮するため,従来の波線理論に基づく手法に比べて膨大な計算量が必要となる.今年度は,計算効率の向上を図るために,昨年度購入した高速PCクラスタサーバーに,さらにメモリとCPUの増設を行い,より高速な大規模計算を可能とした.これを活用しオホーツク海からオーストラリア大陸までにいたる西太平洋地域の地震波形データの解析を行い,初期的な3次元不均質モデルの復元を行った.また,新しい有限波長トモグラフィー法による分解能に関するテストも行い,従来の方法に比べて分解能と信頼性の高いモデルが得られることが明らかとなった.さらに海洋研究開発機構の研究者と共同で,本研究に関連した有限波長トモグラフィー法を応用して,フィリピン海プレートの3次元S波速度構造の復元を行った. これら本研究に関連する研究成果は,AGU秋季大会(米国・サンフランシスコ)や,日本地球惑星科学関連合同大会(幕張),日本地震学会秋季大会(福岡)において発表を行った.さらに,本研究に関連した研究論文は,国内学術誌に1編発表され,さらに新しい手法に関する論文2編と,これに関連した上部マントル内部構造についての論文2編を主要な国際学術誌に投稿している.またオーストラリア国立大学・地球科学研究所において,本研究で開発された新手法の検討を行うと同時に,本研究成果の更なる発展について関連研究者と議論を行った.
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