研究概要 |
国内各地およびマレーシアにおいて,研究に用いる半翅系昆虫のサンプリングを行った.これらのフィールドワークにより,分子系統解析に必要なサンプルの収集はほぼ完了した. チャタテムシ目の頭部の形態学的研究を行い,頭盾および小顎において相同性の解釈の誤りを見いだした・これらの形質は,穿孔-吸汁式口器の進化のキーとなる形質であり,今後この研究結果に基づき,半翅目および総翅目の頭部の形態学的再検討を行う予定である.特に,小顎は半翅目+総翅目の単系統性を支持する形質でもあるため,発生過程も含めた綿密な調査を行う. 分子系統解析に用いるDNAマーカーの探索を行った.ミトコンドリアの12S,16SrDNAと,核の18SrDNA, Histone3,Winglessが,進化速度が遅く,かつ幅広い分類群において比較的容易に増幅できる事から,高次系統関係の探索に有効なDNAマーカーの候補として挙げられた.これらの領域を増幅するためのPCRプライマーの設計は完了し,半翅系昆虫の幅広いサンプリングに基づく予備実験では,良好な結果が得られている.また,ミトコンドリア領域の塩基配列情報に基づき,チャタテムシ目及びシラミ目の分子系統解析を行った.この結果,チャタテムシ目が側系統群である事が明らかとなるとともに,シラミ目のミトコンドリアゲノムに,他の昆虫には見られない特異な進化傾向が見られる事も明らかとなった.現在この結果をテストするために,18S rDNAを用いたチャタテムシ目+シラミ目の広範な系統解析を行っている最中である.
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