研究分担者 |
林 良茂 金沢大学, 自然科学研究科, 教授 (60019750)
佐藤 努 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (10313636)
鎌田 直人 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (90303255)
田崎 和江 金沢大学, 自然科学研究科, 教授 (80211358)
早川 和一 金沢大学, 自然科学研究科, 教授 (40115267)
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配分額 *注記 |
15,600千円 (直接経費: 15,600千円)
2006年度: 2,600千円 (直接経費: 2,600千円)
2005年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2004年度: 10,200千円 (直接経費: 10,200千円)
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研究概要 |
1997年のナホトカ号事故で重度に汚染された海岸においても,海岸砂等については,多環芳香族炭化水素(PAHs)濃度はほぼバックグラウンドに近いところまで汚染が回復している.残留重油は岩の窪みなど一部に存在している程度である.ただし,残留重油中のPAHs濃度は,事故後2年までに約1/3に減少したものの,7年後にもほぼ同じ濃度であり,残留重油中のPAHは長期にわたって存在し続けることが分かった. 2年間にわたるモニタリングの結果,沿岸域河口部の河川水と河口(表層)底質のPAHの分配に関しては,底質の有機物含有量が支配因子であり,有機物あたりの分配係数Kocはオクタノール分配係数Kowとよい相関があることが分かった.すなわち,線形自由エネルギーモデルが成立することが分かった. 表層底質と河川水とのPAHsの交換速度は,近似的に平衡とできる程度に速いことが分かった.以上の知見から,ローカルな沿岸環境系において,例えば生物濃縮のように高濃度にPAHが蓄積するような可能性はきわめて低いと考えられる. 実験室で,PAHsの底質への収着に対する溶存有機物質の影響を検討したが,溶存物質の影響は環数が多いほど大きくなること,現象の正確な記述には,溶存有機物質の底質への吸着も考慮すべきことが明らかになった. 以上のように,沿岸部では,河川水あるいは海水と海岸の粒子等のメディア等の間では,物質の交換は,残留重油相が存在しない場合,かなり速くおこり,特に河口部では擬似的な平衡が仮定できる程度である.固形物に収着されているPAHsは,主に有機物相に存在し,その収着量は,有機物含有量と相関があり,環数が大きいほど分配係数は大きい.また,その分配係数は線形自由エネルギーモデルで予測がある程度可能である.
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