研究概要 |
本年度は多様な免疫監視の制御に関わるペア型レセプターとして、CD99様分子を認識するPILR(Paired type2 Ig-like receptor)とMHCクラスI分子を認識するLILR(Leukocyte Ig-like receptor、別名ILT/LIR/CD85)について、リガンド分子認識機構の構造基盤を相互作用解析と立体構造解析(NMR、X線結晶構造解析)により明らかにすることに取り組んだ。昨年度おおよそ組み上げた大腸菌を用いた発現と巻き戻しにより、ヒト及びマウス由来のPILR群の、細胞外ドメイン全長と免疫グロブリンフォールドVsetドメインのみの2種類を調製した。また、マウス抑制型PILRαおよび活性型PILRβについて、リガンドPILR-Lとの結合実験を表面プラズモン共鳴により行い、特異的結合を示した(Tabata et al. PILRの発現及び機能解析についての論文投稿準備中)。他方、ヒトの抑制型PILRαのVsetについて結晶化に成功し、セレノメチオニン誘導体を用いた結晶から2Åの高分解能データのデータ収集に成功し、多波長異常分散(MAD)法による構造決定を現在進めている。他方、LILR受容体についてはLILRB2とHLA-Gとの複合体の結晶構造解析に成功し、上述の機能的な特徴の構造基盤を明らかにすることができた(Shiroishi et al., PNAS2006)。HLA-Gの特殊な2量体型に注目し、その機能および構造の特徴を明らかにした(Shiroishi et al., JBC2006a, BBA2006)。機能解析からavidity効果により、通常の単量体型よりも強く結合し、効率良く細胞内へのシグナル伝達を行えることがわかった。胎盤内での生理的意義が大きい可能性が高い。
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