研究課題/領域番号 |
17530469
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
教育心理学
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
小柳 志津 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化研究科, リサーチフェロー (20376990)
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研究期間 (年度) |
2005 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2006年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2005年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 文化接触 / 海外滞在 / 文化規範 / ロングステイ / シニア / 対人関係 / 異文化適応 / 退職者 / シニア層 / 認知的評価 |
研究概要 |
本調査は、仕事を引退し海外に在住する日本人シニア層と大学等に留学する日本人学生が、異文化の環境でどんな体験をし、どう適応しているかを比較分析する目的で始めた。しかし、今までの文化接触研究では引退在外シニアを研究したものがないため、まずは新たなカテゴリーである引退在外シニアの実態調査が今回の調査の中心となった。 オーストラリアとタイで約60名と面接した本調査では、まず引退在外シニアを受入れる現地の社会的背景を説明し、ケース・スタディによりシニアの現地での生活を描写して新たなカテゴリーの全体像を概観した。そこでは、ゴルフや現地での新しい人間関係を楽しむシニアをはじめ、年金不安により海外滞在を決めるシニア、受給年金額では日本で生活できないためタイに住むシニア、日本では居揚所を見つけられない単身男性シニアなど、悠々自適のロングステイ像に隠れた引退在外シニア層の実態を説明している。 文化接触の様相については、現地での対人交流を地域や滞在形態により調査すると共に、現地語力やコミュニケーション時のストレス、現地の文化規範に対する捉え方などをインタビューで詳細に把握して、それらの関係を分析した。その結果、オーストラリアとタイでは異なる点が多く見られた。オーストラリアでは夫妻二人の行動が多く強い繋がりが報告されたのに対し、タイでは日本人コミュニティー内で活発な交流が行われていた。また、タイはオーストラリアに比べ日本との文化距離が遠いと考えられるが、日本人シニアはタイ語力が低いにもかかわらずホストとのコミュニケーション時ストレスが低く、対人交流も広く行われていた。一方で、オーストラリアでは英語力が高いがコミュニケーション時ストレスが高くホストとの対人交流にも個人差が大きかった。 従来の文化接触理論とは異なる点として、引退在外シニアの場合、ホストの文化規範をあまり理解せずホストとの対人交流がなくても良好な適応がなされていることが確認された。また、母国で煩わしく感じていた対人規範を気にしないですむことで良好な心理状態を得られるケース、同じ境遇の単身男性や現地女性と活発な対人交流を持つことで自分の居場所を確保する単身男性のケースなど、母国文化を離れることが個人の心理的安定(適応)に繋がる例も多く見られた。
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