配分額 *注記 |
3,830千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 330千円)
2007年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2006年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2005年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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研究概要 |
人問の耳に到来する音響信号は音源の性質,伝播過程の影響などから様々な変化を被る。こうような変化は通常音響パワースペクトル上の相違として表現される。本研究では,音源における性質の変化が音響スペクトル上に頑健に現れる特徴の一つとして,音源の寸法という変数に着目して研究を進めた。音源の寸法を聴覚を通して知ることにより,我々は対象が自らよりも大きい存在か小さい存在かを知ることができる。他の感覚器官の助けを得ることなく,この情報を知ることは我々の遠い祖先が環境に適応して生存競争を勝ち残ってきた上でも重要な役割を果たしていたと考えられる。本研究のテーマとして音響的生態というキーワードを付した主旨はそのような観点からである。さらに,このような音響情報を通じた寸法の適切な把握は,得られた寸法情報を有効活用して,寸法要因によらない音響上の変化を推定することへもつながる。例えば,音声信号は声道が作る形状と声道自体の寸法の両者がかけ合わさった形で耳に到来する。その結果として,大人と子供,男性と女性の間に共通の形状で音声を発したとしても,寸法の違いから実際の音声信号は異なったものとなる。子供に成人男性と同じような音声信号を発生させることは身体構造上無理なわけであり,音声信号から寸法の違いに起因する側面を正規化して受聴する能力は音声コミュニケーションを実現する上でも重要な役割を担っている。この音響的寸法情報の抽出過程に迫るべく,本研究では寸法が時間的に変化を続けるという自然な状況では生じない合成音刺激を用いて,寸法抽出過程の時間追随性について調査した。その結果として,およそ4Hzを境として寸法の追随性が困難になってくることを見出した。しかし,それよりも高い周波数における寸法変調に対しては寸法に基づいて,本来はひとつの音を2つの音の流れとして知覚的に仕分ける能力が備わっていることも見出した。
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