研究課題
基盤研究(C)
フリーラジカルは神経救急疾患や外傷、感染などをはじめとする多くの急性疾患で発生し、病態の進行に大きく関与することが知られている。その病態によるフリーラジカルをコントロールすることは治療の大きな目標である。しかし、その一方で臨床においてフリーラジカルの捕捉と計測は困難である。我々は電子スピン共鳴(ESR)装置によるスピントラップ法を使用して、フリーラジカルモニタリングを実際に臨床において試みてきた。昭和大学救急救命センターに入院加療している急性期の様々な救急疾患に対し、血中のラジカル測定を5,5-dimethy-1-pyrroline-1-oxide(DMPO)をスピントラップ剤として使用して行った。全例においてalkoxyl radica1のスピンダクトが検出された。重症脳損傷例、重症感染症例、整形外科的疾患などでは、そのラジカル強度は病態を反映していた。また脳低温療法、高気圧酸素療法、フリーラジカル消去薬投与などでは、その治療によるラジカル産生の変化を反映していた。ESR法を応用した血中フリーラジカルモニタリングは多くのフリーラジカルの関与して疾患においてその動態を捉えるのみならず、その病態をも反映し、重症度判定や治療効果判定にも応用しうる有用な方法であると考えている。さらにこの動態を詳細に検討する目的で、本年度はラットを用いて同様な血中のalkoxyl radicalの動態について検討し、ヒトの場合と同様な結果を得ることができた。またalkoxyl radica1は脂質過酸化に関与するラジカル種であることが知られているが、未だ生態における動態については不明な部分も多いので、in vitroの系でalkoxyl radica1の詳細について検討することができ、一部論文にも報告した。また今後は脂質過酸化には酸化ストレスの関与が考えられているので、その予防と消去の面からも、抗酸化物質、抗酸化食品などについても検討を続けて行きたいと考えている。
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