研究概要 |
誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)法を用いてマメ科のモデル植物であるミヤコグサの各種有害元素(アルミニウム、ヒ素、カドミウム、セシウム、鉛、モリブデン、ニッケル、塩、ストロンチウム)の吸収、利用機構についての網羅的解析を進めた。昨年度までに各種有害元素の施与条件、分析条件等の確立を行ない、これまでに変異剤(EMS)処理を行なった約2000株の養分吸収能に関わる変異のスクリーニングを進めた。有害元素を含む20種類の異なる元素に関して植物体全体での濃度に変異が認められる系統、特定の部位(根あるいは地上部)に局在する系統を中心に植物と種子の獲得を行なっている。その結果、銅,マンガン,マグネシウム,モリブデン,カドミウム,ニッケル,ヒ素に関して通常の野生株とは全くことなる挙動を示す変異株が存在することが明らかとなった。このように、当初の目的であるイオノームによる解析手法の開発はほぼ完了したと判断される。そこで、特に挙動の異なるマグネシウム変異体に関して戻し交雑をすすめることにより、変異を引き起こしている遺伝子の獲得を進めている。このマグネシウム変異体は地上部へのマグネシウムの移行が抑制されており、生育量に大きな違いは出ないにも関わらず葉脈間に黄化が認められるという表現系を伴うため、変異の発現の確認が用意である利点もある。ミヤコグサはマメ科のモデル植物であり、マメ科はイネ科植物と比較してカルシウム、マグネシウムの吸収量が多いことが知られており、同じ二価のカチオンであるマグネシウムの吸収移行変異体の獲得は今後のマメ科作物の養分吸収機構を解析するための極めて重要な情報を提供することが期待される。
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