研究概要 |
平成19年度は,構造・環境・制御の相互作用によって形成される宇宙構造システムの研究として以下の3つの課題に取り組み,成果を得た. 課題1.環境力(重力傾斜)による構造形状の維持とその安定性解析 昨年度の結果をもとにして,重力傾斜を宇宙機システムの姿勢維持のみならず構造形状の維持に利用した新しい柔軟多体宇宙機システムを検討した.具体的には,非常に柔軟なパネル構造を複数バス系からテザーで支持する地球指向の太陽発電システムを対象とし,システムの安定性を重力,遠心力,歪みエネルギーからなるポテンシャルエネルギーを用いて評価した.さらに,安定な平衡点まわりにおける固有振動数,モード形状の導出を行うと同時に,重力傾斜を構造形状の維持に利用したシステムの特性を明らかにした. 課題2.環境力(圧力差)を利用した柔軟膜面構造とその動的特性評価 インフレータブル構造物を,構造内と環境との圧力差を利用した構造様式と捉え,内圧維持型のマルチセルインフレータブル構造の提案を行うと同時に,面内剛性の評価を実施した.さらに,展開時の動特性評価を行い,ケーブル要素による制御機構を組み込むことで,安定な展開が行えることを示した. 課題3.柔軟構造要素によって結合された小型衛星群のフォーメーションフライト 本年度は小型衛星群制御の要素技術として必至な,小型衛星の姿勢制御・決定系について,昨年開発・打ち上げに成功した超小型衛星HIT-SATのフライトデータを元に,その性能評価を行った.さらに,シミュレーションベースで,特定平面内をフォーメーションフライトする小型衛星群を柔軟構造要素で結合することにより,必要なスラスタ燃料が大幅に軽減されることを示した.
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