研究概要 |
平成19年度はビフィズス菌からの挿入配列の単離および単離された挿入配列の詳細な解析を行った. 1.新規挿入配列様因子TLS16の解析 昨年度同定されたBifidobacterium longum BK28株由来の挿入配列様因子TLS16について塩基配列の解析および各種ビフィズス菌における保存性について解析を行った.TLS16は1.59kbpの挿入配列であり,その内部には転位に関与するタンパク質であるトランスポゼースをコードする単一の遺伝子が存在していた.アミノ酸レベルの相同性解析,および因子末端に存在する特徴的なステム・ループ構造などの特徴から,TLS16は挿入配列IS605ファミリーに属する因子と考えられた.またサザンハイブリダイゼーション解析により,TLS16はB.longum,B. breve,B.adolescentis,B.gallicumの基準株にそのホモログが保存されている事を明らかにした. 2.転位活性を持つ挿入配列様因子TLS143の解析 咋年度構築した転位因子のスクリーニング系を用いて,B.longum 105-A株を用いて転位活性を持つ因子を探索した.その結果,1.43kbpの長さの因子がスクリーニングベクターに挿入されていたため,本因子をTLS143と命名した.TLS143は末端に逆方向反復配列を持つ典型的なIS因子であり,その相同性からからIS3ファミリーに属する因子であると考えられた.1.と同様に各種ビフィズス菌における保存性を調べたところ,TLS16に比べて多くのビフィズス菌種壕存在する普遍性の高い因子であることが明らかになった. ビフィズス菌の転位因子の研究はほとんど行われていなかったが,本研究により二つの因子が同定された.特に,TLS143は転位活性を持つことが証明されたビフィズス菌由来の初めての因子であり,今後更なる応用が期待される.
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