Research Abstract |
本研究は『妙法蓮華經』を用い西夏・漢語を完全対照させると共に、チベット語とも比較しデータベース化することを目的とする。 研究方法は、1.西夏True Typeフォントで西夏文『妙法蓮華經』をExcelデータで入力(5-6月)、「大正新脩大藏經」テキストデータベース(SAT)Vol.9,No.262「御製大乗妙法蓮華經」をダウンロード、異本との校訂を加えて対応(7月)。2.西夏・漢字を文字レベルで対照(8-9月)、単語レベルで対照(10月)。3.チベットTrue Typeフォントで入力した部分を対照(11-12月)。4.西夏・漢双方からの索引、仏教用語の西夏・漢・蔵語対照表作成(1月)、解説(2月)、印刷・製本(3月)、関係機関へ発送(4月)した。 研究成果として、西夏文『妙法蓮華經』は、漢文『妙法蓮華經』の形式・内容を忠実に保持しようとする姿勢が明らかだが、一方で、漢文にも蔵文にもない独自の解釈を加えようとする意図が見受けられた。 例えば、漢文で「偏袒右肩」すなわち「右肩を露わにして」礼拝する場面で、西夏文では「左肩に衣を着て」、蔵文では「上着を片方の肩に掛けて」としている。まず、右肩を問題にする漢文、左肩に注目する西夏文、どちらとも明記していない蔵文。次に、片肩を脱ぐとする漢文に対し、片肩に掛けるとする西夏文と蔵文。結果的にはいずれも「偏袒右肩」になるのだが、この解釈の差にはそれぞれの文化が反映されているようだ。 また、「譬喩品第三」において『妙法蓮華經』の特殊性・優秀性が語られる箇所で、漢文では「この経」、蔵文では「この経」「吾が経」とされている部分を、西夏文では「この法」と言い換えている。もちろん、各言語とも「経」と「法」は別の単語であり、他の箇所ではきちんと対応している。 最終的に西夏51,762字に漢字を対照させたデータベースが完成した。
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