研究概要 |
4次元単連結閉多様体の上の全ての微分構造は,corkと呼ばれる可縮なコンパクト4次元(部分)多様体をその境界のinvolutionに沿って貼り直すことで得られることが知られている.前年度までの研究では様々な基本的な例を与えたが,まだ十分ではない. 研究計画に従い,今年度は主にcorkの研究をAkbulut氏(ミシガン州立大学)と共同で行った.特に,Stein多様体が極小シンプレクティック4次元単連結閉多様体に埋め込めるという性質を用いることで,これまでの研究で得ていた例の簡明な構成を行うことができた.また,(ある)4次元多様体の中に埋め込まれた有限個のdisjointな同一のcorkであって,それぞれの貼り直しにより互いに異なる微分構造が得られる例の構成に取り組んだが,そのようなcorkの例を構成することはできなかった.これについては今後も引き続き研究を行いたい.しかし,Stein多様体の性質を用いることで,ノンコンパクトな4次元多様体の中に,同一とは限らない無限個のcorkをdisjointに配置し,それぞれが互いに異なる微分構造を産み出すようなものの例の構成は,ある程度上手くいった.現在はその細部を確認中である. 同相だが微分同相でないコンパクトStein 4次元多様体の例は,最近Akhmedov-Etnyre-Mark-Smithにより初めて与えられた.彼らはknot surgeryを用いている.私とAkbulutは前年度までの研究で,ベッチ数の小さなそのような例を,corkを用いて構成した.微分同相でないことの証明の鍵は,構成した多様体をSeiberg-Witten不変量が消えていない閉多様体の中に適切に埋め込むことであった.以前は楕円局面のKirby図式を変形することでそのような埋め込みを実現したが,今年度の研究ではStein多様体の性質を用いることで,埋め込みの構成を簡略化することができた.
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