研究領域 | 生命素子による転写環境とエネルギー代謝のクロストーク制御 |
研究課題/領域番号 |
23116005
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研究種目 |
新学術領域研究(研究領域提案型)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柳澤 純 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (50301114)
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研究期間 (年度) |
2011-07-25 – 2014-03-31
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研究課題ステータス |
中途終了 (2013年度)
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配分額 *注記 |
60,840千円 (直接経費: 46,800千円、間接経費: 14,040千円)
2013年度: 19,500千円 (直接経費: 15,000千円、間接経費: 4,500千円)
2012年度: 19,370千円 (直接経費: 14,900千円、間接経費: 4,470千円)
2011年度: 21,970千円 (直接経費: 16,900千円、間接経費: 5,070千円)
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キーワード | エピゲノム / 代謝 / 転写 |
研究実績の概要 |
本年度は提案課題4項目のうちの2項目について解析を進めた。具体的に進めた課題は、「eNoSCを中心とした細胞内エネルギー制御システムの破綻と疾患との関係の解明」および「eNoSCの人為的制御技術の開発と疾患治療への応用」である。 「eNoSCを中心とした細胞内エネルギー制御システムの破綻と疾患との関係の解明」では、eNoSCの主要構成タンパク質であるヌクレオメチリンの遺伝子欠損マウスを作製し、eNoSCの個体での機能解析を行った。一般に、高脂肪摂取によって肥満体になってくると、ヒトもマウスも代謝が低下してくることが知られている。哺乳類細胞のエネルギー消費の4割は核小体でのリボソーム合成に費やされるため、本研究者らは高脂肪食負荷動物におけるリボソームRNAの転写量を測定した。その結果、肥満動物ではリボソームRNA転写が著しく低下していることを見出した。この結果は、リボソームRNA転写の高脂肪食負荷による低下が肥満を引き起こしている可能性を示唆している。そこで、リボソームRNAの転写を抑制するeNoSCの主要構成因子ヌクレオメチリンの遺伝子欠損マウスを作製し、高脂肪食負荷実験を行ったところ、摂食量はヌクレオメチリンの遺伝子欠損でまったく変化がない(むしろ若干摂食量が増える傾向にある)にも関わらず、著しく肥満傾向が抑えられることが明らかとなった。この結果は、脂質の高摂取によるリボソームRNAの転写抑制が肥満に繋がることを示している。 さらに、「eNoSCの人為的制御技術の開発と疾患治療への応用」では、ヌクレオメチリンの結晶構造からフラグメント・エボリューション法によって結合すると思われる化合物3種類を設計し、合成した。3種類のうち2種類の化合物を細胞培養液中に加えるとリボソームRNAの転写の促進が認められた。今後ヌクレオメチリン欠損細胞を用いて実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績のとおり、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今までの研究から、肥満の原因の一つがリボソームRNA転写量の低下であることが示された。今後は、高脂肪食が何故リボソームRNAの転写量をさせるのか、その具体的なメカニズムについての解明が必要である。特に高脂肪食負荷時にリボソームDNA上のエピジェネティックな状態がどのように変化しているかについては大変興味深い。リボソームDNA上のエピジェネティックな変化が肥満しやすい体質を作り出す可能性がある。また、ヌクレオメチリン遺伝子欠損マウスの結果から、ヌクレオメチリンの阻害剤はリボソームRNA転写を促進することによって高脂肪食摂食時の肥満を抑制する可能性がある。そこで、取得した2種類の阻害剤について、細胞レベルでメカニズムを解析すると同時に、マウスの肥満に対する効果を検討したい。 さらに、提案課題4項目のうち、2項目「eNoSCを中心とした細胞内エネルギー制御システムの解明」および「eNoSCと協調してエネルギー情報とエピゲノム情報をつなぐ新たなシステムの探索」についても研究を進める。特に「eNoSCと協調してエネルギー情報とエピゲノム情報をつなぐ新たなシステムの探索」については、ヌクレオメチリン遺伝子欠損マウスの解析より、脂質代謝とリボソームRNA転写を結びつける新たなシステムの存在が明らかになりつつある。当該システムの解明は、細胞内エネルギー代謝と個体のエネルギー代謝の関係解明の大きな一助となるものと考えられる。また、「eNoSCを中心とした細胞内エネルギー制御システムの解明」については鋭意解析を進めているが、いまだに見つかっていない。本研究については阻害剤の開発成功が大きな進展をもたらすのではないかと期待している。細胞に阻害剤を添加し、ヌクレオメチリンの作用を抑制した状態で細胞内のタンパク質、DNA、RNAなどのメチル化状態を測定することを予定している。
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