研究分担者 |
鈴木 宣明 上智大学, 文学部, 教授 (30053531)
R.L. シロニス 上智大学, 文学部, 教授 (60053500)
F. ペレス 上智大学, 文学部, 教授 (30053466)
K. リーゼンフーバー 上智大学, 中世思想研究所, 教授 (60053633)
大谷 啓治 上智大学, 文学部, 教授 (30053557)
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研究概要 |
本研究は、西洋古代から中世への移行の問題を、思想史的伝統という観点から取り上げ、12世紀までの思想史伝承を専ら担った修道院文化における教父思想の受容史を解明することを目的とした。従来、各思想家が教父から受けた影響など、断片的に研究されたことはあったが、総合的な研究はほとんど為されなかった。そこで、本研究では、包括的な計画を立て、共同研究と研究者の個人研究を組み合わせながら、教父思想の伝達史を時代を追って辿り主だった教父と古典古代の諸著作の受容と中世文化への適応の仕方を吟味し、中世文化における古代後期思想の歴史的全体像を捉えようと企画した。 本研究の主要な成果は以下の通りである。1.当時の学校制度による教父・古典古代思想の伝達の方法とルートの解明,2.ベネディクト会修道制の諸改革による教父思想受容の諸段階の区別,3.中世図書館目録の研究による、教父時代の著作の流布状況の調査,4.以上の研究により、8世紀から12世紀まで、教父・古典古代思想の執筆者たちがそれぞれどの程度の権威を持っていたかを確認,5.教父・古典古代思想家を受容する際の選択基準・目的・位置付けの識別,6.11・12世紀における修道院神学と初期スコラ神学との明確な区別により、修道院神学に固有な教父文化との生きた連続の発見,7.ラテン修道院神学におけるギリシア・東方教父の修道伝統の吟味,8.重点的な研究により、既に、(1)教父・中世の歴史記述の変遷,(2)13世紀におけるアウグスティヌスの思想に対する受容の基本的類別,(3)ディオニュシオス・アレオパギテスの12,3世紀スコラ学・神秘思想に対する影響の解明,(4)13世紀後半から15世紀、またはルネサンス・近世に到るまでの教父思想の受容に関しては、その輪郭を明らかにすることが出来たが、より詳細な研究を今後の課題とする。
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